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マジックオルゴール
総務部に営業部の平林がやって来た。
背も高く、端正な顔立ちと爽やかな笑顔は女性社員からも人気があり、その平林を遠くから見つめる琴羽も密かに想いを寄せていた。
しかし、仕事で話す機会にも恵まれなかった琴羽は、時々見掛ける平林をただ遠くから見つめることしかできない。
その日、二十二歳の誕生日を一人寂しく家で迎えていた琴羽は、自分へのささやかなお祝いとして買ったショートケーキを口にしながら、暇を持て余すようにスマホを手にした。
すると、何気なく眺めていたサイトの下に、『あなたの願い、一つだけ叶えます』という広告が目に入った。
私の……願いを?
思わずその広告バナーを押してみると、願いを一つだけ叶える『マジックオルゴール』という商品をレンタルで貸し出しているサイトに繋がった。
いかにも怪しげなサイトに、そんなものがこの世にあるはずなんてない、と思いながらも琴羽は商品の説明文を目で追っていく。
そこには、特殊な魔術が込められたマジックオルゴールは、不老不死と大金を手にすること以外の願いが叶う、と記されていた。
レンタル料金は、一週間で五千円。
その微妙な金額に、琴羽はジッとそれを見つめている。
特にこれといった趣味のない琴羽は、外食もせずに質素な一人暮らしをしていた。
……五千円。
これを高いと見るか、安いと見るか。
目の前の食べ掛けのショートケーキへ目を向けると、誕生日のお祝いが、たかが六百円のケーキ一つとは……と、なんだか物寂しく思えてくる。
五千円で何でも一つ、願いが叶うとしたら……。
琴羽は[注文する]のボタンを押した。
土曜日。
四日前に注文したマジックオルゴールが届いた。
はやる思いで開けてみると、オルゴールはいかにも魔術めいた古風な見た目だった。
小さなオルゴールとはいえ、手にするとズシリと重さが伝わってくる。
……とうとう、お迎えしてしまった。
段ボールの中には、このオルゴールのほかに説明書と返送用の宅配伝票が入っていた。
説明書には、使用方法と注意書きが書かれている。
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