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火曜日。
琴羽は目を覚ますと、すぐにオルゴールのフタを開けたが、そこにあったものに言葉を失う。
真っ白だった紙が、なぜか薄いグレーに染まっていたのだ。
おそるおそるそれを取り出して広げてみると、書いたはずの文字は消えていた。
……文字は消えているのだから、ここに書いた願いは叶う……はず?
説明書にあった悪影響という文字に怯えながら、琴羽はオルゴールを元の段ボールに詰め込むと、出勤途中に立ち寄ったコンビニで、それを返送した。
……大丈夫。
きっと、これで大丈夫。
グレーに染まった紙を忍ばせている鞄に手を当てながら、琴羽は自分にそう言い聞かせていた。
木曜日。
あれから特に何も起きてはいないが、夜になって平林からメッセージが届いた。
それは、翌日の飲み会の場所と時間の連絡だった。
ほら、大丈夫だ。
悪いことなんて……そうそう起きるはずがない。
金曜日。
仕事を定時で終えた琴羽は総務の女性達と店に向かうと、テーブルには平林達がすでに席に着いていた。
こぞって平林の近くの席を陣取る女性達に、琴羽はテーブルの端に座るしかなかった。
全員が席に着いて乾杯したあとは、それぞれ近くの席同士の者が談笑をし始めている。
琴羽は、誰からも話し掛けられず、一人寂しくグラスを口にした。
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