目玉焼き【2】

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「半額だろうが、食べて満足できれば御の字です。それに、100円のパンなど驚くに値しません」 「へっ?」 意外な返事を聞き、変な声が出た。 「も、もっとリーズナブルな食パンがあるんですか?」 「世の中、広いですよ。リーズナブルといえば、この値段でこの美味しさ? といったような、一度食べたらやめられない商品も存在する」 「へええ~」 一体、どこのスーパーで売っているのだろう。瞳をきらきらさせる冬美に、陽一が胸を張った。 「僕は独身生活が長いからね、冬美さんが思う以上にいろんな経験をしています。どんな食材も調理しだいでご馳走になるものだから、まあ、任せてください」 陽一は企画課リーダー。家庭でもその手腕を発揮しそうだ。 「じゃあ、例えば……朝食メニューはパンと目玉焼きとコーヒーですよね。どんな感じに調理するんですか?」 「そうですねえ。僕は時々、あれを使います」 陽一はキッチンに行くと、荷ほどきをしていない段ボール箱から新聞紙の包みを取り出し、持ってきた。 「なんですか?」 「以前、キャンプ場開発を企画した際、メーカーが記念にくれたんだけど」 新聞紙から現れたのはスキレット。アウトドアでよく利用される、鋳物のフライパンだ。 「鉄製ですね。わ、小さいのに重い」 「僕の愛用品です。これで調理すると、単なる目玉焼きも違う味になる」 「本当に? フライパンみたいに使えばいいんですか?」 前のめりの冬美に、陽一はにこりと微笑む。 「明日の朝、実演させていただきますよ」
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