金目鯛の煮つけ

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「確か……結局、乗せてもらえなかったんですよね」 「うん。でも、密航してまで外の世界を知りたかった彼の気持ちはよく分かります。僕もそうしたかもしれない」 意外な発言だった。穏やかな横顔からは、そんなダイナミックかつ無謀な望みは見て取れないから。 (ああ、でも……課長は仕事ができる人。こう見えて、実はとんでもない野心家だったりして) 助清くんがそんなタイプだなあと、島を眺めながら考える。そして、はっと思い出した。 ここは助清くんの生まれ故郷。今回は推しロスを癒すための傷心旅行である。舘林課長とのんびりしている場合ではない。 「課長、そろそろ予約時間です。レストランに行かなくては」 「ああ本当だ。野口さんといると、時間が経つのが早いなあ」 どういう意味か不明だが、どうでもよろしい。早くご飯を食べて、さっさと解散して、助清くんが生まれ育った街をめぐるのだ。 そして最終的には、ファンになったきかっけの写真が撮られた場所に行き、自撮りする予定である。 「課長、急ぎましょう。早く早く!」 「ど、どうしたんです。お腹が空いたのですか?」 冬美は急ぐあまり、課長の手を引っ張っていた。 彼が赤面するのに気づきもせず。
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