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「写真を撮りましょうか」
「は、はいっ。お願いします!」
課長にスマートフォンを預けて、海の前に立つ。助清くんみたいに両手を広げたポーズをとり、にっこりと笑う。
ちょっと恥ずかしかったが、課長ならいいと思った。オタ友が皆そうであるように、こんな自分を笑ったりせず許容するだろう。いや、むしろ協力してくれる。
「撮りますよ。3,2、1……」
アングルを変えて、何枚も撮ってもらった。フォルダーを確認すると、イメージどおりの写真がずらりと並んでいる。
「すごい、いい感じに撮れてる! 課長、お上手なんですね」
「そ、そうかな?」
照れる課長を見て、冬美はほっこりする。やっぱりこの人は良い。
「よかったら、私もお撮りしますよ?」
「いやあ、僕はいいですよ。見せる相手もいないし」
「そんなこと言わずに。あっ、私と一枚どうですか? 一緒に旅をした記念に」
「えっ、二人で?」
課長はますます照れるが、それならと提案を受け入れた。
「でも、スマホをセットする場所がないですね……じゃあ、こうしましょう」
「え……」
ぽかんとする課長に寄り添い、腕を伸ばしてスマートフォンを構える。
「こ、この体勢で撮るってことですか?」
「そうですよ。近いけど、我慢してください」
「いや、僕はいいけど……」
「よしっ、撮りますよ。課長、早くカメラ目線お願いします。手が痺れちゃいます」
「は、はい」
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