金目鯛の煮つけ

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間宮課長はお喋りだ。しかも、どこか他人をバカにした話し方をするので、周りに良く思われていない。舘林課長のことも偉そうに噂していた。 (でも、なんで私のことばかり多く話すの?) あ然とする冬美に、課長が急いで付け足す。 「あの人は口が悪いので誤解されがちですが、実のところ、話題にするのは気に入った人とか、可愛がっている部下についてです。お喋りは愛情の裏返しなんですね」 「そ、そうなんですかねえ……??」 好意的すぎる解釈に疑問符がつくが、課長は大真面目だ。とりあえず、そういうことにしておいて、続きに耳を傾ける。 「それで、野口さんのことを僕は少々知っていたのです。間宮くんによると、きみはアイドルを追いかけるために会社を休み、給料やボーナスもその趣味に浪費しているようだ。あと、食欲旺盛で、飲み会になると人の二倍は食べるとか」 「はいい!?」 なんという言い草。確かに冬美はアイドルオタクで、そのとおりの行動をしている。だけど『推し活』は浪費じゃなくて応援。よく食べるのも事実だが、二倍というのは大げさだ。 「やっぱり悪意満載じゃないですか」 「うーん、難しいな。でも僕としては、まったく悪意を感じなかったし、むしろ彼は心配そうな感じでしたよ」 「心配?」 「少しは貯金しているのか。今に食べすぎて病気になるんじゃないか、という感じです」 「なっ……そんなの、余計なお世話ですし!」 冬美は口を尖らせるが、課長はなぜか微笑ましそうに笑う。
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