目玉焼き【2】

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「営業部の資料が間に合わなくて、延期になりました」 「そ、そうなんですか……あっ、じゃあ夕飯は?」 「弁当が出たので、もらってきましたよ」 よく見ると、ビジネスバッグの他に紙袋を提げている。 「冬美さんこそ、なぜ今頃会社の近くに?」 「え……ええと、それはその」 高級食材の店をチラ見する。陽一も不思議そうに目をやるが、何も言わずにコートを脱いで冬美に着せかけた。 「買い物もいいけど、そんな格好では風邪を引きますよ」 「あっ、そんな、私は大丈夫だから」 「いいから、いいから。さあ、帰りましょう」 肩を抱かれて帰宅した。 (あああ、もう……) 買い物を失敗するは、夫に寒い思いをさせるは……自分は「妻失格」だと落ち込んだ。 無口になった冬美を心配してか、陽一は家に帰ってからも優しかった。会社から持ち帰った弁当と、妻の弁当も温め、お茶まで淹れてくれる。 「冬美さんもお弁当だったのですね」 「は、はい」 結婚して初めての夕飯で彼に手間をかけさせ、しかも半額シールを見られてしまった。 恥ずかしさで、冬美は縮こまる。 「いただきます」 陽一は手を合わせると、弁当を美味しそうに食べた。営業部が用意したのは、普通の鮭弁当だ。 冬美はぼうっとして、彼が食べるのを眺めた。 「冬美さん、食べないのですか?」 「あっ、はい。いただきます!」 冬美も箸を取り、弁当を食べた。でもなんだか違和感がある。とりあえずお腹を満たしてから、訊いてみることにした。
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