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『ありがとう。終わったらすぐに帰りますね』
「はい。あ……」
通話を切ろうとして、はっと気づいた。
「あの、朝ごはんは何がいいですか?」
今朝は出勤途中にあるパン屋さんで朝食を済ませた。昨日の結婚式とかパーティーとか二次会とか、あれやこれやで疲れてしまい、二人とも寝坊したのだ。
「リクエストがあれば買い物しますので。和食なら鮭とか鯵の干物とか。それともパンがいいですか?」
『そうですねえ』
しばし間を置いてから、返事が聞こえた。
『僕はいつもパンとコーヒーと、目玉焼きかな』
ずいぶん簡単なメニューである。
そういえば、課長は今朝もフレンチトーストとコーヒーだった。普段はシンプルな食生活なのねと思い、胸を撫で下ろす。
『それではまた、後ほど。気をつけて帰ってくださいね』
「はいっ。ありがとうございます」
冬美は通話を切ると、思わず微笑んだ。
「金目鯛の煮つけとか言われなくて良かった~」
明るい気分で買い物を再開する。卵とパンさえあれば朝ごはんができるなんて素敵!
さっきまでの焦りはすっかり消えていた。
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