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翌朝――
食卓に着いた冬美の前に、熱々の料理が提供された。
「美味しそう~!」
コンロから下ろされたばかりのそれは、じゅうじゅうと音を立てて、冬美の食欲を刺激する。
スキレットで調理されたハムエッグだ。
「はい、コーヒーですよ」
「ありがとうございます。あれっ……」
陽一の姿をあらためて見つめた。
「ちゃんとエプロンを着けるんですね。ふふっ、なんか可愛い」
「可愛い?」
陽一は照れるが、まんざらでもなさそうだ。機嫌よく冬美の向かい側に座る。
「食べてみてください」
「はいっ。いただきま~す」
目玉焼きのとろりとした食感。ハムはぱりぱりと焼けて香ばしい。
調味料は普通の塩胡椒だ。調理器具が変わるだけで、こんなにも味が違うのかと冬美は感心する。
「いかがです?」
「実演最高! キャンプ場にいるみたい」
「そんなにですか?」
冬美の感想は、ますます彼をご機嫌にさせた。
「レタスのサラダとオレンジもどうぞ。冬美さんが食材を用意してくれたので助かりました」
「そんなの、なんてことありませんよ。朝ごはんを作ってもらえて私のほうが幸せです」
ちょうどパンが焼けたので、苺ジャムを塗る。
ジャムは陽一の荷物に入っていた。ちなみにコーヒーセットも彼の持ち物である。学生時代からこれまで一人暮らしだった彼は、毎朝パンを主食にしていたと言う。
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