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台所でドリップケトルでお湯を沸かしている相手の隣まで行くと相手は、ストールをとった私を一瞥する。
「髪、切ったんだ」
心機一転したくて、胸元まであった長さをバッサリいった。
数年ぶりのミディアムは洗うのも楽だし、セットするのも簡単だけれど。
「前の方がよかった?」
「どっちも似合ってる」
「…………」
こういう時に限って、さらりと褒めてくれるから、とことんズルい人だと思う。
「ネックレス、ありがとう。すごく気に入ってる」
付けてるところを一番に見せたかった相手は、目を逸らしてから「ならよかった」と素っ気なく答えた。
ものすごく分かりにくいけど、多分、照れている。
「私が来てなかったらまだ無視してた?」
「家引き払ったら連絡するつもりだった。信じないって言われたらそれまでだけど」
と、もれなく皮肉を言われるから、クリスマスでの発言を根に持たれていることが判明する。
「……娘だからって理由で選ばれたら、普通に傷付くでしょうが」
「俺は室瀬が娘じゃなかったらよかったって死ぬほど思ったよ」
「え? 娘だから良かったんじゃないの?」
「逆になんで俺がそう思えると思った?
どう考えたってタケさんの一人娘に俺なんかが手ー出していいわけだろ」
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