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『元気にしてたか?』
あの時、怒ってくれたら、どれだけ楽だっただろう。
謝ってほしくなんかなかった。
責めてほしかった。
咎めてほしかった。
それなのに最後の最後まで全部を許してくれるから、消えることのない自責の念だけが幾層にも重なり合っていった。
おもむろに私を自分の胸の中に引き寄せた臣は、力強く抱きしめてくれた。
「娘に会わない理由を聞いた時、嫌われてるからって話してた。
だから室瀬が嫌ってないだけであの人は十分嬉しいよ」
「嫌うわけ、ないっ…」
背中に回された腕が頼もしく、ずっと隠れていたくなるような安心感に包まれる。
パパもまたこの優しさに癒されていたのだろうと思ったら、ほんの少しだけ救われた気がして。
「っ、…パパのこと、想ってくれてありがとう」
臣がどれほどの寂しさを抱えていたのか、やっぱり私には想像も及ばないけれど。
八朔町まで引っ越してきてくれたことも。
今日までこの部屋を借り続けてくれたことも。
ここまで慕ってくれる相手がいた父親を、娘としても、すごく誇らしく感じるから。
この人の存在を、心からありがたく思ったのだった。
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