満ちる月に囚われて

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『気持ち的に大丈夫なの?』 「それは平気。心配しなくても大丈夫」 『もうー……いい歳なんだから次はちゃんと結婚できるような人にしなきゃダメよ。 出会いがないなら結婚相談所なんてどう?町田さんの次女ちゃん、お医者さんを紹介してもらったみたいで』 「そういうのいいって。会社も今からって時だし、それ以前にまだ焦ってないから」 『円が焦る頃には、ママこの世からいなくなってるわよ。 そもそも仕事するなとは言ってないでしょう。邁進すればいいし、お父さんもそのつもりで会社任せてるんだから。 でも子供は早いうちに産んだに越したことないの、こっちだって孫の面倒見てあげるって言ってるじゃない』 「分かった、ママの気持ちはよーく分かったから。産んだ後はお世話になります」 『それじゃ入会資料送っておくわね』 「だからいらないってば。本当にやめて」 『何が嫌なのよ。こっちの条件に合わせた人を紹介してくれるし、結婚するならそっちの方が手っ取り早いでしょう』 「それは結婚を目的にしてる人。私はまだその境地に至ってない」 『恋愛結婚もお見合い結婚もそんなに変わらないわよ。最後は生活になるんだから』 「それはママの話でしょ」 『…あなた、まだそれ』 「もう切るよ」 仕事中だって言ってんのに。 通話を強制終了させた機体を、そのままバッグの中に放り込んだ。
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