はじまり
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はじまり
海を、見ていた 重たい 鈍色に霞む海を 手のひらに収まる木箱に入って 帰ってきた弟を抱いて 「蒼、」 不思議と涙は溢れなかった 「蒼を守るためなら兄さんは、」 海を、空を かき消してゆく雪に 気持ちの芯まで凍ってゆく 「なんだって、できるんだよ」 弟が命を預けた真冬の海は その日から、 どんなに季節がすすんでも、 色を変えることはなかった。
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