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ところが次の日。
一人一人が前に出て、自己紹介をすることになった。
「名前と好きな遊びを教えて下さい」
と先生は言った。
先生は爺ちゃんみたいな白髪の男の先生だった。やさしい先生だけど、そんなことを言うなんてヒドイと俺は思った。
なぜなら、タツはしゃべるのが大の苦手なんだ。みんなの前で一人でしゃべったりしたら、また・・・どうなるかわからない。
いよいよタツの番が来てしまった。
俺はタツの後ろの席だったから、タツの背中をたたいて
「俺もいっしょに行ってもいい?」
と、タツに聞いた。
タツは少し考えて立ちすくんだが、ガキ大将の鈴木くんが、わざと
「待ってました~! ヤナギサコく~ん!」
と叫んだので、タツは一人で前に出て行った。
タツは小さく口ごもりながら
「や・・や・・やな・・や・・やな・・ぎ・・さささ・・さこ・・・た・・たたた・・・たつ・・・」
と、何とか頑張って言ったのに!
「きこえませーん!」
と、鈴木くんが大声で笑うように言った。
俺は頭にきて、鈴木くんの席まで行って鈴木くんの胸ぐらをつかんで立ち上がらせたら先生に止められた。
「暴力はいかん」
と、先生は言った。
「言葉の暴力はいいのか?」
と、俺は先生に突っ込んだ。
「ダメだな。それも・・・」
と、先生は笑って、鈴木くんを睨みつけた。
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