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タツのお母さんは、おばあちゃんみたいに年とっていた。お父さんは、もっと年とっていた。俺の母親の話によると、タツは『48の恥かきっ子』だと言う。当時、その意味を俺は理解できなかったが、恥という言葉に俺は嫌悪感を感じた。同じ人間、同じ子どもなのに、生まれた時から恥などという形容詞を被せられることに、強い抵抗を感じた。
大人たちが、罪もないタツを、そんな目で見ていると思うと・・・何か自分が頑張ってタツを守りたいような気持になった。
タツの家の父さんは出稼ぎに出ていて、滅多に姿を見せなかった。母さんは畑を作っていて家は街から4キロくらい離れた山の上にあった。タツは入学した頃、文字を読めなかった。もちろん書けなかった。幼稚園にも保育園にも通っていなかった。
けれど、タツの運動神経は抜群だった。高い木の上までスルスルと上り、猿のように枝から枝へと飛び移ったり、二階の窓から地上へ飛び降りたりした。走れば誰よりも早く、どこまでも疲れを知らずに走り続けた。
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