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ロボット×人間
ラリーと週末を共に過ごしながら
(何かこう…。ロボット状態からやっと人間に戻れるって気がするな…)
と思った。
情緒というモノは水分と似ている。
カビ菌に該当する腐れ外道なクズ達が影響力をふるっている空間では、情緒を使うと
「水分がカビ菌を繁殖させる」
ように
「自分の心の大事な部分にクズ達の影響力が入り込む」
気がする。
よってレジナルドのようなクズがのさばってる学園に居る間は…
「情緒」というモノを封印して
ロボットのように機械的に自分の役目を果たすしかないのだ。
何の罪悪感も持たずに弱い者虐めをしてゲラゲラ笑ってる連中というのは…
主観的には
「ちょっとした無邪気な悪戯で嫌われ者の権威者を慌てさせてやった道化者」
のようなユーモアのノリがあるらしく…
自分達の陰湿さを賢さやウィットだと錯覚している。
マーガレットは嫌われ者の権威者でも何でもない無害な特待生に過ぎなかった。
陰湿な虐めと
無邪気な悪戯は
全くの別物なのに…
弱い者虐めを心から楽しめる人間のクズ達は周りをも倒錯したユーモアもどきに巻き込む倒錯した巻き込み力を持っていて、ゲラゲラ笑いながらアンチ派閥の者達とも馴れ合っている。
「弱い者虐めを心から楽しめる人間=選ばれし者」
とでも思ってるかのような
「倒錯した選民意識の共有誘致」
がそこにはあるのだ。
(シャルトル族みたいな人種だな…)
と密かに思ったのだが…
レジナルドの家の領地はコンフォース国でも東側。
七公国時代にはシャルトル国だった地域。
先祖代々の領主という事なので…
クリストファロス侯爵派に属しているわけではないものの
(だからこそラムスプリング侯爵派に組み込まれているのだが)
シャルトル系貴族。
レジナルドはれっきとしたシャルトル族だった。
(…先祖代々から「卑怯者の血」を引き継いでる人間というのは「調子に乗ると必ず卑怯さを賢さとを間違えた外道行為に走る」ように遺伝子に刷り込みでもされてるのかね?)
と疑問に思ってしまう…。
ーーともかく私は
学園と寮とを行き来してひたすら仕事と学業をこなしてる間はロボットのようになっていて、週末にラリーと一緒に過ごす時だけが人間に還っているという状態なのだった…。
****************
ただ、週末に顔を合わせるのはラリーだけではない。
女中頭のミリセントが私が屋敷に戻ると押しかけてきてアレコレ鑑定させる…。
リンドンが「患者用の薬を切らした」と言っては調合を依頼してくる…。
何のかんのとこき使おうと待ち構えてる人達が居るので、のんびりとハネを伸ばす暇は無い…。
他人の分の仕事まで押し付けられてる気がしないでもないものの
(レジナルドのようなクズが居ないだけマシか…)
と諦めるしかないのだろうと思った。
ラリーはラリーでグレアムと共に元気がないと思ってたら…
妹のモナが学園卒業後、地元で社交界デビューし、婚約者だったクレイグ・スノーデンの元へといよいよ嫁ぐ事になっていて…
「姑達に虐められないか」
と心配していた。
ラリーやグレアムを読心した限りでは
モナは母親似の美人。
クレイグはモナを気に入っていて大事にする気があるらしく仲睦まじい。
心配しなければならない要素は無いと思うのだが…
ブラコンでもありシスコンでもある妹大好きな兄達は何かのつけて妹の顔色をうかがって勝手に気を揉んでいたのだった。
貴族の護衛なんてやってると世の中の醜さ・他人の身勝手さ・残酷さを見せつけられる機会にふんだんに恵まれるから…
被害者・犠牲者を見た時に
「もしも自分の大切な人があんな目に遭わされたら」
と心配症になるのは判る気はする。
自分自身が受ける苦痛や屈辱には耐えられるのに
自分の大切な人が苦痛や屈辱を受けるのには耐えられない
という男は多い。
だからこそ無敵に見える男を屈服させて操る際には「人質」が使われる。
ラリーにしてもグレアムにしても充分に役立ってるのだから…
モナには充分に人質としての価値がある。
露骨に粗末に扱われる事はないと思う。
権力組織は取り込んだメンバーにある程度良い思いをさせておく。
それによって「思い切りよく抜ける」という選択肢を封じるものだ。
そういった心理的駆け引きによる求心力はメンバーにとっては互助会保険のように感じられる。
モナがもしも姑達に虐められたとしても、必ず誰かしら止めに入る形でモナが護られる可能性は高い。
(ラリー達を鎖で繋いでおく互助会保険的な意味合いで)
そこに仲間意識やら思いやりは無いにせよ…
役立つ人間が従順である限り「弱み」が攻撃される事はない。
「ラムスプリング侯爵派自体が内側から瓦解させられる諜報工作に毒されている」
とかではない限りは…。
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