12人が本棚に入れています
本棚に追加
【世界】の調和
「私が本音を話すとデリックさんがキレるのは分かったから
敢えて書斎では話さなかったし
思考として考えるのも避けたけど…
私はデリックさんの話を聞いて
実は安心した面があったんだ…。
シュティルナー人の間で共有されてる残酷な言い伝えは
『子殺し正当化』の言い伝えを実践するだけだと
『シュティルナー人は残酷な人種』だという偏見通りになるけど
『自殺推奨』の言い伝えが実践される事で
『生命をかけて精神論が実践されてる』
という文化面での釣り合いが起こるんだと思うよ…。
ーー【地球世界】で
私が人間だった頃に最後に暮らしてた国は
とても自殺者が多い国だったんだ…。
弱い者、嫌われ者から切り捨てていって
自分達が切り捨てて自殺へ向かわせておいて
それを自覚もしない人達が沢山いた国…。
『自殺して自分自身を神に捧げれば人智を超えた叡智が得られる』
だなんて…
そんな伝承も発想もあの国には存在してなかったけど
それでも私は自殺する瞬間に
『全てを知りたい!』
と思った…。
ーー【地球世界】では
そうやって自殺する瞬間に
『全てを知りたい!知らなければならない!』
と激しい想いを持つ人間達が何人も何人も死んで
空間内で認知的不協和が掻き立てられる事が鍵になって
【無辜の逸脱者】が輩出されていたんだよ…。
それが『始まり』だったの。
【無辜の逸脱者】が生み出されて
【無辜の逸脱者】が自分の存在の消滅と引き換えに
『知りたい』と願って魂レベルで死ぬからこそ
反物質空間の中の【視聴者】達も『ルールを思い出す』事になるの。
『ルールを思い出す』前の【視聴者】達は
『自分が何故特定の人間に魅入って追い風を吹かせて甘やかしてるのか』
を自覚できてないんだ。
『先なる者』が『次なる者』へと
魂レベルでの死という大厄をなすりつける鬼ごっこ。
魂レベルで死んで蘇る通過儀礼。
そういった『ルール』。
それが自分の魂核に刻まれてる事を
【視聴者】達が思い出すから
『次なる者』へ通過儀礼が降りかかる。
その図式がーー
この【世界】にもどうやら有るみたい…。
この【世界】にもどうやら【視聴者】が居て
余りにも酷い外道な人達は【逸脱者】として
肉体の死と共に反物質空間へ転送され魂レベルで死ぬんだって…
そう分かったから…
私は安心できたんだよね…。
全ては無駄にはならないの。
『苦しめられた人達はただ苦しめられただけで、苦しめた側が何の罰も贖罪もなく無罪放免で勝ち逃げできる』
みたいな、そんな御都合主義の虚妄は通用しないんだって…
それが分かった…。
デリックさんには
『この【世界】にも【視聴者】が居て外道な【逸脱者】は必ず魂レベルで死ぬ事になる』
という事がどんなに【世界】の調和にとって大切な事なのか
理解できないだろうから…
こういう話は一生聞かせられないだろうけど。
本当にね。
【世界】の調和にとってとても大切な事なんだ…」
****************
夜になって部屋に戻ってきたラリーに対して
「【視聴者】が存在する事による【世界】の調和」
について話してあげた…。
私にとっては
「この世界に【視聴者】は居るのか?居ないのか?」
という疑問はずっと気掛かりな問題だったのだ。
それが解決した事で
「全てに意味があり、全てに報いがある、と今なら信じられる」
と思った。
そうして得られた深い安心感…。
ラリーに抱き寄せられて腕枕で眠りにつきながら
(…幸せだなぁ…)
と心から感じた…。
最初のコメントを投稿しよう!