終話:地獄は遠いから…

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終話:地獄は遠いから…

593a98e3-b337-40e1-a6cf-7214ac3c58a1 人間のような知性ある生き物が命ある間にした生き方は その魂に延々と宿る「存在性の作用」を決定する。 多くの人間は生きている間に 加害者としての生き方に堕ちたり 被害者としての生き方に堕ちたりする。 意識の変遷と成長の履歴がその魂に刻まれ その魂にとっての「永劫反復の傾向」となる。 「加害者と被害者」という相反する立場を体験をして それらを統合・調和させる一連の運命の流れが 「永劫反復のパターン」 となるから自分自身の魂を永遠に存続させる糧となる。 なのでーー 「他人を犠牲にしてダブルスタンダードな天国にしがみつく」 という生き方にしがみつき通した者達は… 「その魂が消滅する最期の瞬間まで一方的な加害者であり続ける」 事になる。 そんな呪われるべき存在にとっては 「【逸脱者】が魂レベルで滅ぼされ、根底から別のモノに変わって【視聴者】として蘇る」 という運命は、ある意味では【救い】なのだ。 滅ぼされる時まで 悪しき存在であり続けるモノ達…。 【地球世界】には【視聴者】が居て… 呪われるべき悪しき人達の魂を消滅させ 「生き直させるために蘇らせる」 仕掛けがあったが… 「この【世界】はどうなのか?」 がずっと分からなかった。 だけど、どうやらこの【世界】にも同じ仕掛けがあるようだ。 元から有ったのか 誰かが作ったのか それは判らないまでもーー この【世界】の【視聴者(クローザー)】は【地球世界】のように 必要悪として存在して【世界】を調整するのだろう…。 私は師匠に「人間の世界で暮らせ」と言われて その指示に従って人間社会で暮らす事にしたけど… 「人間になりきる」 事に対して逃げ腰だった。 だけど、今はーー 「人間になりきる」 のも悪くないかも知れないと思ってる。 **************** 恋とか執着とかの不安定な甘い感情は 「人間になりきった状態」 でしか起こらないモノだという事を実感した。 人間になりきって 甘い感情に浸り それに病みつきになってしまう人達…。 そんな人達に対して 「愚かだ」 と嫌悪感を感じていたのは 「馴染みたくない」 という忌避感があった。 馴染んでしまいアドバンテージを失えば 侮られ 搾取される。 「誠実であれば受け入れてもらえる筈だ」 と、そう信じようとしたのに切り捨てられた苦しみ…。 そんな【地球世界】の頃の苦しみを、繰り返したくないと思っていた。 だけど考えてみれば【地球世界】はあまりにも狂っていた。 この【世界】とは違う。 私がただの人間だった頃に暮らした国でも ヘルマンの国でも 国自体が蝕まれていた。 そのせいで「敵へと向けられるべき排除衝動」が「身内弱者・嫌われ者」へと向けられるように誘導されていた。 そんな盲目的な社会…。 【世界】が機能停止するほどの大量の【逸脱者】を出して 大量の魂レベルの死が起きて 大量の魂核(ナノマシン)が散った【地球世界】。 あそこまでの悪がーー この【世界】に既に存在しているなどとは思わない…。 私はもっと安心して 「人間になりきって良い」 のだと思う。 今後、長い時間を愛情深くラリーと暮らし続けて いつか死ぬ時がきたらーー 「また生まれてきたい、と思うほどの魅力が生きてきた中にあっただろうか?」 という自問自答で ラリーの事を念頭に浮かべて 「一緒に生きてくれてありがとう」 という想いを持てるように… そんな人間らしい生き方へと 埋没していって良いんじゃないかと思う…。 いつかーー シャルトル族の御都合主義の虚構史実が人間達の共通認識となってしまって… 誰も彼もが 「被害者と加害者を入れ替えて認識する」 ような虚偽と不実さに堕ちた時には その時こそが【地球世界】の地獄の再現となるのだろう…。 だけど「その時」はーー あの地獄はーー この【世界】ではまだ遠い…。 だからまだ今は私は 罪なき人間全てに認められている権利を行使し 幸せに暮らして良いはず…。 私を好きで居てくれる人とーー。 「一緒に生きてくれてありがとう」 と言える未来へ向けてーーーー。
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