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隠秘《ヴァーへーレン》の女神視点
かごめかごめ
籠の中の鳥は いついつ出やる
夜明けの晩に 鶴と亀が滑った
後ろの正面だあれ?
【地球世界】のわらべ歌を時折思い出してしまう。
「鬼ごっこ」という遊びは
鬼が鬼役を次の者になすりつける遊びだ。
だけど最初の鬼は
「前の鬼に鬼役をなすりつけられた」
というわけじゃない。
「鬼は別の誰かに鬼役をなすりつける」
というルールと共に鬼役が科せられたモノ。
そういった「始まり」の特異性を理解して私は
「この【世界】の反物質空間に【視聴者】を生じさせる仕掛けを施した」
のだった。
そういった仕掛けを可能にしたのが「転移能力」。
私がこの世界に新規参入した時の
「スキルを三つ持てる」
という特約契約では
「ユニーク・スキルは自作できる」
仕様だった。
なので私は「転移能力」を自作できたのだけど…
その後、この世界は仕様変更によって
「スキル自作サービスは無くなった」
ので、私はある意味ではとても運が良かった。
今時分の参入者側だと
「【世界】へと干渉できる範囲は著しく狭められてしまっている」
のだ。
もしも初めからそんな風に【参入者】が
「【世界】への干渉に関して無力な状態」
だったなら…
この【金令世界】まで【地球世界】のような地獄になる可能性もあった。
だからこの【世界】の反物質空間に【視聴者】を生み出す事にした。
保険代わりに。
下地としてはーー
「【逸脱者】認定して良さそうな外道過ぎる特約契約者達を反物質空間へ転移させ魂レベルで殺す事」
が必要だった。
残酷と言えば残酷ではある。
「お前が道を誤らせ狂わせた者達が正気に返り、苦しみが癒える時までお前は『自分自身』を再構築する事さえしてはならない」
「今のお前と全く同じ誤ちを犯し、お前と同じ波調に共鳴する『次なる者』が現れ、その者の不条理と悪をお前自身が看破し、その者を滅ぼして『新しく生き直す』以外ではお前は未来永劫【世界】に参入してはならない」
そういった『破れないルール』を契約有効化スキルで魂レベルで結ばせてから反物質空間へ転移させ殺した…。
魂核にさえ『ルール』を刻んでやるには
迷いのない激しいモチベーションが必要だった。
それは
「バカは死ななきゃ治らない」
という摂理に基づく
「魂核レベルでの生まれ変わりの強制執行」…。
「そこまでしなければならない」
ような外道な特約契約者達が居たのだ…。
そこまで堕ちてしまう者達が【地球世界】出身の特約契約者達の中から湧いてしまっていた…。
(必然かも知れない…)
と思う。
【地球世界】の【視聴者】が【逸脱者】を反物質空間へ追いやって魂レベルで殺す事で…
その時に飛散する魂の粒子や魂核のカケラ(ナノマシン)が【世界】の維持に使用される。
【視聴者】は【世界】の維持に必要な魂の粒子やナノマシンを発生させる生産者でもあるのだ。
なので【地球世界】の反物質空間にしか【視聴者】が居ないままでは…
「他の【世界】は魂の粒子やナノマシンを【地球世界】からの輸入に依存する」
しかないままになってしまう…。
そうした【地球世界】への超過依存は
「大量の【逸脱者】発生の必要性」
へと繋がってしまう。
【地球世界】が「外道な【逸脱者】達がのさばる地獄」に変わりやすいのは、そうした外部からの超過依存と無関係ではないという事だ。
だからこの【世界】の反物質空間に【視聴者】を生じさせ、鬼ごっこのように「先なる者」が「次なる者」へと大厄をなすりつける仕組みを作っておく事が「【地球世界】の参入者達の負担を減らす」事にも繋がる。
もちろんーー
「最初の【視聴者】」となるべき初の【逸脱者】達は、皆が皆、余りにもダブルスタンダードで身勝手な人達だった…。
(魂レベルで殺しても罪悪感が生じないくらいに)
あの人達はルールを埋め込んでやって反物質空間へ転移させる瞬間まで
往生際悪く激しく激昂し
私に襲いかかろうとした…。
私は
(ああ…知ってる。こういう人間を私は知ってる…)
と既視感を感じ…
(さようなら)
という意味をこめてお辞儀した…。
どこまでも
どこまでも
どこまでも
他人を自分のナルシシズムの餌にして
どこまでも
どこまでも
どこまでも
他人の命を啜ることに慣れた…
鬼子母神と鬼子達のような人達…。
そんな生き物が
人間の皮をかぶって人間社会に湧く必然。
人々はまるで何も知らず
家畜小屋に囲われている家畜。
鬼に屠られる順番が回ってくる時まで
鬼に逆らわないように
仲間を裏切って良い思いをするように
鬼によって狂わされる。
鬼を封じることすら考えず
仲間を食い物にして鬼に媚びる。
そんな人達…。
隷属者の仮初めの平和をありがたがって生きるのもありなのだろう。
だけど必ず
「鬼に屠られる」
順番が回ってくる…。
****************
『大地の息子』または『大地の要塞』と呼ばれた悪魔の眷属…。
それは
「人同士の仲を取り持たせる」
という和合の作用を持つ智霊…。
私はその眷属に属していた。
グイソンもグシオンも共に「山」を意味している。
大地は巨大な雌牛に擬えられ、「山」は雄牛に擬えられると共に「大地の女神の息子であり夫でもある」という暗喩を纏っていた。
「山」は天然資源の宝庫。
「山」を意味する「雄牛」は権威の象徴であり「無知無明な者達への犠牲強要」の象徴でもあった。
(三角形)「△」は「山」と共に「目に見える権威」を表し
(ゆえに)「∴」は「関連の隠されたヒエラルキー」「認識外の影響力」を表す。
(逆三角形)「▽」は「谷・湖」と共に「目に見える受動作用」を表し
(なぜならば)「∵」は「関連の隠された犠牲」「認識外の犠牲」を表す。
グシオン呼ばれる精霊(悪魔)の眷属は
「七十二柱の精霊の中でも特別視されるもの」
という訳ではない。
何故なら
「和合の作用を持つという事が【世界】にとってどれだけ重要な事なのか」
を通常人間達は認識できないのだから…。
グシオンの眷属に属する者は
「本当は繋がっていきたかった…」
と激しい後悔を抱えている…。
だからこそグシオンの眷属は
「人同士が繋がっていけるようにする」
という悲願を叶えようとする。
「恨みしか残らない心ならいらない」
と多情多恨さを自分の中から消去していく。
「逆恨みをアドバンテージとして他人を食い物にする鬼達」
に対して…
「迷いのない存在否定」
を向けて消去してやるために…。
グシオンの眷属が創り出す人同士の和合は
「不純物を削ぎ落とされた地下水が山の頂きで湧き水として湧く」
のに似たモノ。
…「和合に向かうための離反」
という図式を踏まえた
「離反状態からの和合」。
それを成さしめて私はこの世界の調和を祈るーー。
私がこの【世界】に来て得た幸せや愛を
私の「次なる者」であるあの子にも得させるためにーー。
「私が滅ぼしたあの子の魂が癒されるように」…。
他の誰のためでもなく
人類のためではなく
【世界】のためですらなく
「あの子の幸せ」
という私的な
(決して捨てる事のできない)
本当の願いのためだけに
この世界の調和を祈るーーー。
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