一目惚れほど怖いものはない

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逃げようとする舌を彼の長い舌が阻止するように絡めとる 唇の端からツーと流れる唾液はどちらのものか・・・ 深い、深い口付けが離されると肩で息をしていて 「うさぎ、可愛い」 彼は力の抜けた私をもう一度抱きしめた 「制服濡れちゃったね」 「・・・誰の、所為だと」 「フフ、可愛い」 この人は宇宙人かなにかで人の話を聞かないんじゃなくて理解できないとかだろうか? 「帰りたい」 ずぶ濡れの制服が重くて いい加減逆上せてきた クラクラする身体を軽々と持ち上げた彼は 「平気、力持ちだからね」 バスタブから出るとブレザーのボタンを外しにかかった 「・・・こ、まりますっ」 「なんで?濡れてるじゃん」 「それは、あなたがお風呂に」 「あなたじゃないよ?名前知らないの?」 「知らない」 「フフ、可愛い」 結局なにを言っても最後は “可愛い”と口角を上げるだけで ほんと宇宙人 呆れた視線を向けると 「神楽坂縁(かぐらざがえにし)」 覚えてねと口にした 「・・・え、ちょ、待って。神楽坂、っていうの?」 「そうだよ?」 「神楽坂尊君とは?」 「あ〜、尊は兄貴」 「・・・は?」 「だから間違えたら困るでしょ? “縁”って呼んでね?次、あなたなんて言ったら痛いことするからね?」 ニッコリ笑った神楽坂縁は 私のネクタイを抜き取るとブラウスを力一杯引き裂いた 「キャァァァァァァ」
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