メーデー・メーデー・メーデー

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「・・・えっ!」 「ん?なに?」 いつもはおさげ髪に黒縁眼鏡の模範的な制服姿の私 今は、おさげ髪を解いたウェーブだし なにより代名詞の眼鏡が無いのに何故私だと分かったのだろう 「不自然だったからね」 「え?」 「宇佐見結(うさみゆい)ちゃん」 「・・・」バレてる 「変装、してたんでしょ?」 「・・・ん、と」 変装というかママからの強制というか どう説明しようか悩んでいるうちに 「助けてあげたからお礼を頂戴」 ニッコリ笑った神楽坂君は長い腕で私を抱きしめたまま首を傾けて そのまま唇を重ねた 「・・・っ!!」 驚きに目を見開いた先に 長いまつ毛が見えて 背中を反らして逃げようとする身体は 更にギュッと引き寄せられてしまった 「ご馳走様、うさぎちゃん」 眉目秀麗、頭脳明晰・・・ 校内で有名なモテ男の神楽坂君にとってキスはなんでもないことかもしれない でも・・・ 「・・・わ、え?どうしたの?」 私にとってはファーストキス 助けられたとはいえ、こんな風に奪われるなんて思ってもみなかった ポロポロと溢れる涙に驚いた神楽坂君は 「泣かないで」 甘い声で涙を拭ってくれるけど 騙されてはいけない。泣かせた張本人だ 「もしかして、初めてだった?」 返事の代わりに頷く 「へぇ」 ハンカチを取り出して涙を拭っている私には一瞬眉を寄せた神楽坂君が見えていなくて 「変装、戻しちゃいな」 言われるまま髪を編み眼鏡をかけた 「教室に戻るでしょ?」 「・・・はい」 「じゃあ、送ってあげる」 「・・・遠慮します」 「ブッ、あ、ごめんごめん。あんまりストレートだったからね 分かった。少し離れて送るね」 「・・・」 背の高い神楽坂君の後につかず離れず挙動不審のまま三年生の教室まで戻った
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