メーデー・メーデー・メーデー

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「・・・な」 んでよ! そう言いたいのに乱れた呼吸で喉はカラカラ 「どうして家を知ってるかって?」 「・・・」 「俺、生徒会長様だからな」 「・・・・・・は」 笑いながら告げる彼は危険人物だ 体力はとっくに限界を超えているけれど何としても逃げなきゃ 「うさぎ!来い」 催眠術を使うみたいに指がバラバラと私を誘う 「メーデー・メーデー・メーデー!」 遭難信号を出しながら後退りする 玄関に寄りかかっていた彼は 「それなに?」 クスリと口角を上げるとアンバーな瞳に火を灯した 何度も「メーデー」と繰り返す私に 「フフ、可愛い」 破壊力抜群の笑顔で近づいた彼は 「キャ」 軽々と私を肩に担いだ 「メーデー・メーデー・メーデー!」 お腹がグリと肩に押し潰されて吐きそうになるのを堪えて繰り返す 「言ってろ」 全く動じない彼は 「じっとしてろ」 横暴な物言いで堂々とマンションの正面から出ると真っ白な車に押し込んだ 「・・・ギャッ」 ドサッとシートに倒れ込みブサイクな声を上げた私を無視して 「家」 ひと言告げると車は静かに動き出した 「何処にっ、あのっ、止まって 帰ります!私、帰りますっ!」 シート越しに運転席へ声を掛けるけれどハンドルを握った男性は微動だにしない 対照的に優雅に脚を組んだ彼は 「静かにね?うさぎ!」 蕩けるような笑顔を見せた
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