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足枷をつけた尊君の行為は記憶回復というより恐怖を覚えただけだった
あの家を破壊してまで連れ出してくれた縁を
助けてくれたと思ってしまった
でも・・・
根本的なところは逆だった
幼い頃の記憶を思い出したと言った時
縁は一瞬顔を歪めた
あの表情は、私が全てを思い出したという絶望だったんじゃないだろうか
その後の会話で都合の悪いところの間違いに気付いた・・・
頭の中に流れ込んできた記憶は尊君とのものだった
一生懸命作ってくれた白詰草の指輪は
少し大きくて
ママに縛ってもらったんだった
「・・・尊君」
「ん?」
「あの写真、もう一度見せて」
「・・・うん」
携帯電話を操作して此方に差し出した
ゆっくり近づいて携帯電話を受け取る
その画面はあの日見せられた
白詰草の指輪をした幼い頃の私の手
「ブカブカでママに縛ってもらったよね」
「思い、出したの?」
「うん」
「本当にごめんなさい」
「許せない、かな」
「そうだよね」
「今は、ね」
「・・・っ、ゆーちゃん」
片手で顔を覆って嗚咽を漏らす尊君
忘れることは一生できないと思うけど
いつかは許せる日が来るはず
あの日を悔いている尊君に
かけてあげられるとしたらこんな言葉だけだと思う
携帯電話を尊君に戻そうとして
指が画面に触れた
「・・・っ」
スライドされて出てきたのは
尊君と二人で撮った写真
いけないと思いながら
指が次を探す
大きなソファに座って
絵本を読む笑顔の二人
お庭を眺めながらお絵描きをする二人
手を繋いでお散歩する二人
指を動かすたび
幼い日の記憶が更に鮮明に頭に流れ込んでくる
穏やかなたけちゃんが
大好きだった頃の私は
無邪気な笑顔を見せている
視線を尊君へ向けると真っ赤な目をして唇を噛んでいた
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