手繰り寄せた記憶

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「完治にはまだ時間がかかると思う」 愛人の子供だと勘違いして距離を置いた尊君 親子の修復も時間はかかるかもしれない 「大学は海外を選んだから もう二度とゆーちゃんの前には顔を見せないよ」 「・・・」 「僕が言うのも変だけど幸せになって欲しい」 「・・・・・・うん」 「だから父さん、どうか縁もゆーちゃんに近づけないって約束して」 「宇佐見さん。それは必ず約束します 縁を娘さんには金輪際近づけないと」 「お願いします」 今日を最後に尊君に会うことはなくなる 願った解放なのに胸の奥が真逆を思っている ・・・・・・何故? 視線を落とすとアルバムの最後のページが見えた 芝生に座って寄り添っている二人の背後から撮られた写真は 二人のお喋りが聞こえてきそうなほど温かい 僅かに顔を傾けて笑い合っている その声が・・・ 聞こえてきた 『もういっかいいうね」 『うん』 『おおきくなったらゆーちゃんとけっこんするっ』 『うんっ』 『『ねっ』』 『たけちゃん』 『うん。ゆーちゃん』 可愛い声はたけちゃんだった 弾むような返事はたけちゃんに向けてだった 「たけちゃん」 「・・・っ、ゆ、ぅちゃん」 「友達になれる、かな」 「・・・いい、の?」 「うん」 「あり、が、とっ」 クシャリと崩れた笑顔と嗚咽を堪えきれない尊君は ベッドの上で泣き崩れた そっと寄り添って同じように涙を流すお父さんとは近いうちに関係も修復できるだろう 「宇佐見さん。素敵なお嬢さんで」 「でしょう?自慢の娘です」
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