新たな道

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卒業式が終われば私はパパとアメリカへ向かう 大学の入学までのブランクはパパの手伝いをすることが決まっている 「ゆーちゃん?」 「あ、えっと」 卒業式には出ないという尊君には先に伝えておきたい 「あの、ね?」 「うん」 「卒業式当日の夜の便で日本を発つの」 「・・・・・・そっか」 二月の二週目に迫った卒業式まであと僅か 本当は何も言わずに離れるのが良いのかもしれない でも・・・ 伝えたいと思うのは私の所在を知って安心して欲しい気持ちと 尊君が何処に行ってしまうのかを知りたいと思っているからなのに 尊君の行き先はまだ聞けていない 「ゆーちゃん?」 「・・・あのね、尊君」 「うん」 でも・・・もしかしたら尊君は この怪我のことも合わせて忘れたいと思っているかもしれない そうしたら私の言葉は重荷になる 出かかった声を飲み込んで笑顔を作った 「今日のスープ。ちょっと失敗したかもしれないの」 「ん?そんなこと?大丈夫だよ ゆーちゃんが僕のために作ってくれたってだけで美味しいに決まってるもん」 フワリと笑う尊君は やっぱり王子様のようで 見ているだけで癒される 「車椅子、用意するね」 「ありがとう、ゆーちゃん」 胸が煩くなるのを誤魔化すように 視線を逸らして立ち上がった 「あ」 視線の先に見えた窓から雨雲が広がる空が見えた あんなに晴れていたのに・・・ 「尊君、ごめんね、外へは行けない」 「ん?」 振り返った尊君は急な空の変化に眉を下げた 「ゆーちゃんの所為じゃないよ」 そうだけど・・・ 今の気分が反映されたような空に視線を戻すことが出来なくなった
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