メーデー・メーデー・メーデー

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「・・・起きて、うさぎ」 ゆらゆらと身体が揺れて 「・・・っ、痛っ」 重い目蓋を開けるとお腹に鈍痛が走った 「ごめんね。痛い?うさぎがあんまり言うこと聞かないから。ちょっと力を入れ過ぎちゃった」 悪怯れる風もなく舌を出した彼の肩越しに見えたのは見知らぬ部屋だった 帰ろうとした私の鳩尾を殴って気を失った隙に此処に運んだのか 「ん?・・・ここ、痛っ」 「俺の部屋へようこそ」 どこか楽しそうにも見える彼は戯けたように両手を広げた なんて日だろう 名本先生の所為? それとも・・・ 考えても厄日としか思えない状況に鼻の奥がツンとして涙がポロポロと溢れてきた 「なに、可愛い、泣いてるじゃん」 泣かせた癖に嬉しそうな彼のことは頭のおかしな人と思うことにして どうにかして此処を逃げ出せないか考える それを遮るように腕を引いた彼は 「さぁ、おいで」 ソファに寝ていた私を膝の上に横抱きにした 「可愛い」 悪魔のような黒い微笑みが見えた途端 「邪魔だなぁ」 彼はシュルッと髪ゴムを抜きとると黒縁眼鏡も取り去った 「・・・っ」 「こうやって隠れてたの?悪い子だねぇ でも大丈夫、俺が見つけたからには 愛でて、愛でて、ドロドロに溶かしてあげる」 頭の中に鳴り響く警報音 メーデー・メーデー・メーデー! ママ!パパ! 誰か・・・助けて!
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