二人の距離

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「あの日のことは・・・ こうやって尊君と過ごしてきた七年が少しずつ消してくれてるよ?」 「・・・」 「もしかしたら・・・何かのキッカケで 思い出さないとは言い切れないけど それでも、尊君と一緒に居たいって思うの」 「・・・ゆ、うちゃん」 「だから・・・」 「ちょ、待って!ゆうちゃんっ」 もう一度告白しようとした勢いは 尊君の声に阻まれてしまった 「あ、ごめんね?声が大きくて」 「ううん」 驚く私へのフォローを忘れない王子様は 「宇佐見結さん」 涼し気な瞳をパチパチと二回瞬きで隠したあと 「僕と結婚を前提にお付き合いしてください」 胸に手を当てて綺麗なお辞儀を見せた スラリと背の高い尊君の動きは やっぱり王子様みたいにかっこいい 心臓が一瞬ギュッと苦しくなって そのあと煩いくらい騒ぎはじめた 「・・・よろしくお願いします」 ドレスは着ていないから 裾を持ち上げることも出来ないけれど 微かに震えている尊君の緊張を解すように手を取った 「・・・っ、ゆーちゃん。平気?」 驚いたように顔を上げた尊君は 私が触れている手を見ている 再会した日に握手したきり触れることのなかった尊君の手は相変わらず温かい 私の想いを伝えるにはこれが一番だと思う 「平気だよ。変な尊君」 「・・・っ」 本当は触れるまで心配だった もしかしたらギリギリのところで触れられないかもしれないと不安だった もしかしたら震えるんじゃないかって でも・・・ それは杞憂に終わった
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