二人の距離

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一年後 クリスマス休暇を使って 尊君はまた空を飛んで来た 相変わらずの頻度でしか会えない二人は 付き合い始めたとはいえ まだ手を繋いでデートをするのが精一杯で キスさえお預けのまま そんな関係に焦っているのは私だけなのか 夜は私の自宅近くのホテルに帰る律儀な尊君 「ゆーちゃん」 「ん?」 「夜は何を食べようか」 「・・・ん、えっと、ん・・・」 本当は自宅に招いて手料理を振る舞いたかった その想いを飲み込んで 「尊君の好きなの食べに行こう?」 尊君を見上げて笑って見せた 「・・・ゆう、ちゃん?」 それなのに 尊君はそんな私に気付いて立ち止まってしまった 「・・・・・・ん?」 「大丈夫?無理して、ない?」 無理なんてしていない ただ、尊君ともっと一緒にいたいだけ もっと、尊君に触れていたいだけ 結婚を前提にって告白を受けたはずなのに 会えない時間と距離が そのままの二人の距離みたいに思えて 尊君の気持ちさえ疑ってしまいそうで怖い そんな私の頭の上にポンと手を乗せた尊君は 「ゆーちゃん」 低くて甘い声で名前を呼んだ ゆっくりと顔を上げて視線を合わせると、そこにはいつもと変わらない笑顔が見えた 「ゆーちゃん」 「ん?」 「あのね」 「うん」 「キス、しても良い?」 「・・・っ」 そんなの聞かないで欲しい 熱を上げる頬を隠すことなく頷こうとしたのに 「あ、違うな・・・ゆーちゃんと キス、したい」 尊君の返事のほうが先で 少し照れたその顔に騒がしくなる胸が更に高鳴って 尊君を見上げたままそっと目蓋を閉じた
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