二人の距離

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触れては離れる啄むような口付けは 尊君の熱が乗り移ったみたいに私の唇も熱くする 「ゆーちゃん」 「・・・」 「ありがとう」 「・・・」 「僕を選んでくれて」 口付けの合間に囁く尊君の声は いつもより甘い 「ゆーちゃん」 「ん?」 「僕と結婚してください」 「・・・っ」 歩道の真ん中 お互いの鼻が触れそうなほどの距離で聞いたプロポーズは キスの余韻も加わって身体が甘く痺れた オデコが触れ合って 間近で見つめ合うだけで どちらともなく笑顔になる そんな・・・ 居心地の良い尊君のそばにいたい 考えるまでもなく答えは決まっていた 「はい。喜んで。あ・・・」 弾むような返事をして お礼を言うつもりの口は 性急に合わせられた尊君の唇に塞がれた 後頭部に回された大きな手に固定されて深くなる口付け 性急だったはずなのに そこからはゆっくりと熱を与えてきて それは、もう二度と後悔したくないと話してくれた尊君の想いがそうさせているように感じる どんな時も私を気遣ってくれる優しさに 尊君を選んでよかったと心が温かくなった 絡めとられるような甘い口付けに 尊君のシャツを掴んで必死でしがみつく でも、もう限界 力が抜けた両脚の所為で 立っていられない 「・・・んっ」 離れたくないのに崩れていく身体は 尊君の長い腕の支えで胸の中に収まった 「・・・ごめん」 「ううん」 耳をつけた尊君の胸からは トクトクと早い心臓の音が聞こえてきて それも私に触れているからだと思うだけて甘い 「フフ」 僅かに漏れた小さな笑いに頭の天辺にリップ音を立てた尊君は 「好き、大好き」 耳元で甘く、甘く囁いた 「・・・」 熱い吐息が耳を擽るだけで 身体に甘い刺激が落とされたようで 身体の奥が疼き始める そんな私を見透かすように 「朝まで一緒に居たい」なんて 甘く誘うその声に頷くのが精一杯だった   
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