王女をやめて村娘Eに再就職した私ですが、畑で王子を掘り当てて鍬を片手に冒険に出るようです

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「昨今の【物語不況】により、この世界は閉鎖されることになりました」  やはり来たか、というのが私の感想だった。  外の世界で『若者の活字離れが~』とか叫ばれている中、半ば人々に忘れ去られた物語であるこの世界がここまで存続できていたことの方が奇跡だったんだと思う。 「この世界の登場人物である皆様は、他の世界の登場人物となるべく就職活動をしていただきます。なるべく現状のポジションを活かせるような形での就職が望ましいかと……」 『王として就職できる世界がどこにあるというのだ!?』『王妃から身を落とすなんて真っ平ごめんよっ!!』と両親が泣き叫び、説明のために集められた臣下達がざわめく中、私は部屋の隅でなりゆきを眺めていた説明官その2にそっと近づいた。  メインの説明官に詰め寄ることに忙しい皆は、そんな私の行動には気付いていない。 「あの」 「はい?」  スーツ、という見慣れない衣服に身を包んだ説明官その2は、気配もなく近付いてきた私に多少ビクつきながらも私の方へ向き直る。  そんな説明官その2に向かって、私は常々考えていた思いをぶちまけた。 「どこの物語でもいいんですけど、絶対メインキャラに絡まないような村娘Aに再就職するには、どうしたらいいんでしょう?」 「……はい?」  怪訝に返した説明官その2は、眼鏡を眩しく反射させたのだった。
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