偽りマーメイド

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『中西…海姫さん?』 「え?あ…えっと…」 上を見上げると、一人の女の子が立っていた。 私と同じ水着を着てる? あれ、この子、確か……。 『A組の佐久間柚那です。ちょっと来てもらえませんか?』 和翔の彼女だ。 何だろう…。 「あ、えと…ここで友達を待ってて…」 『大丈夫。すぐ済むから』 長い睫毛が印象的な可愛らしい女の子だ。 けれど、その瞳から私の事を好んでいる様子はない…。 むしろ…私の事を嫌がっているようにしか見えない。 有無を言わせない、まっすぐな瞳。 「うん、じゃあ…」 私は立ち上がり、前を歩く佐久間さんの後につづいた。 だんだん、崖の上の方へ上がっていく。 「………和翔…」 目の前に立っていた、久しぶりに見た和翔の姿。 胸が苦しくなる。 一体、何があるの? 『海姫…どうして…』 『2人幼なじみなんだってねー。和翔ね、私と一緒にいる時もあなたの話するのよ?』 私は黙って聞いていた。 そりゃあ、幼なじみだからね。 話題に出る事はあるだろう…。 『んーとねー、これは賭けなんだけどね。上手く行けばー、えへへへっ』 佐久間さんは私と同じようにパーカーを被り、私の方を見てニヤリと笑った。 『和翔、ごめんね』 『は?』 「ちょ…和翔に何をーー」 佐久間さんは、和翔を勢いよく突き飛ばした。
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