偽りマーメイド

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『そうなんだ。ね、いきなり「付き合って」は言えないから…俺とまずは友達になって?』 「友達?」 『そう。中西さんって本田の事好きなんでしょ?俺、そういうの大丈夫だから』 私は一瞬考える。 自分の好きな人が、別の異性が好き… 飯塚くんは耐えられるんだ。 私は今でも和翔が他の女の子と一緒にいるだけで耐えられないというのに。 「何で?」 『え?』 「それでも平気なの?」 『え、だって友達としてなら側に居られるじゃん?それに…』 「それに?」 『友達として側にいたら彼氏になれるかもしれないし』 そう言って飯塚くんは笑った。 確かに、側に居たら私はいつか和翔の彼女になれるかもしれない。 少しだけど可能性はある。 けれど…今は和翔と距離を置かなければ私の心は壊れてしまう。 それから、私達は連絡先を交換して別れた。 次の日…。 『えー、飯塚と連絡先交換したんだー!!』 教室に入って席に着くなり、いきなり菜香が叫んだ。 朝からうるさい…。 「声でかいよ。…友達ならいいかなって」 実際、私に害はないし、"彼氏"にならないのであれば…。 『この先何が起きるか分からないよね~』 菜香は楽しそうに言ったけれど、私は全然楽しくない。 だけど、居心地が良かったのは本当だ。 "安心感"が感じられた。
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