浦島 故郷へ帰る

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 浦島太郎は、そろそろ故郷が恋しくなってきた。 「もう帰りたいんだけど」  それを聞いた乙姫は驚き、手にしていた徳利を落としてしまった。 「そう……ですか……」  乙姫は下を向いたまま押し黙ってしまった。  太郎はこの気まずさを何とかしようと、わざとふざけた口調で言った。 「そうだ、姫と過ごした思い出に、一度くらいは寝所を共にしたかったな。ははは、もちろん冗談だけど……」  乙姫の両肩がぴくんと動いた。ゆっくりと顔を上げて、太郎を見つめた。 「……え?」  姫の真剣な眼差しをまともに受けた太郎は、口元に笑いを貼り付けたまま、間の抜けた声を出した。 「私も実は同じ事を考えた事があります……」  姫は急に目を伏せ、頬を赤らめた。 「ですが、あまりにはしたない事ですし、私の勝手な思い込みであったならと、口に出す事が憚られました。でも、今そうではない事が分かりました……」  姫は立ち上がり、太郎の手を取った。 「どうぞ、私の寝所へ……」  太郎は姫に手をとられるままに従いつつも、言ってみるものだと、急な展開にも係わらず、気持ちを昂ぶらせていた。  やがて、大きな扉の前に着いた。姫自ら扉を開けた。  広い室内の真ん中ほどに畳が六畳ほど敷かれ、その上に純白の夜具が用意されていた。  姫は扉を閉め、内側からしっかりと鍵を掛けた。そして、するすると衣擦れの心地良い音を立てながら、太郎に背を向けたままで、着ている物を脱いで行った。  すっかりと脱ぎ終わると、姫の肌は透き通るほどに白かった。  滑らかな背中と、それに続く腰の括れから豊かに広がる丸いお尻が美しい。  振り返った姫の乳房は手の平にすっと収まりそうに小さい。だが、濃い桃色の二つの蕾がすでに硬く突き出している。  姫のおんなは艶やかに濡れ光って、太郎を待っているようだ。  姫は太郎の目に全てを晒しながら、ゆっくりと先に夜具の中へと入った。 「さ、太郎様も……」  掛け布団で口元まで覆い、くぐもった小さな声で姫は言った。  太郎は大慌てで着物を脱ぎ捨て、猛るおとこも剥き出しに掛け布団に手を掛けた。 「太郎様、私、あなたの子を産み、この竜宮城の跡継ぎにしたい……」 「そりゃ、嬉しい事だ。では、早速!」  太郎が布団をめくり上げた時、姫の左右に開かれた脚の付け根辺りに、四つの白い寒天で出来たような玉を見つけた。 「太郎様、これにあなたの精をおかけ下さいませ!」  姫の言葉に太郎は驚いて畳の上に尻餅をついた。 「これって、これって……」  身も心も一辺に萎えてしまった。 「私は魚を統べる乙姫。子作りも当然、魚と同じです。さ、早く精を。さもなければこの卵達は死んでしまいます!」 「これって、これって……」  阿呆の様に太郎が繰り返しているうちに、卵の色が黒くなり、見た目にも堅くなってしまった。 「ああ、死んでしまった。死んでしまった……」  姫は卵を抱きかかえ泣き出した。しばらくして泣き止むと、目尻を吊り上げた凄い形相で太郎を睨み付けた。 「衛兵!」  姫は大声で叫んだ。  どこからともなく青黒い鎧を着込んだ見上げるばかりの大男が現れ、姫の前にかしずいた。 「お呼びでしょうか……」  低い声で衛兵は言った。姫は太郎を指差した。 「この者を今すぐ処分しておしまい!」 「かしこまりました……」  衛兵は立ち上がり、太郎の方を向いた。  その姿はたちまち巨大な鮫となり、太郎を頭からバリバリバリと三口で食べてしまった。
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