がんばるキミに恋してる

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 実際、某少年漫画のヒロインの身長と体重が発表された時、“これアバラ浮き出てるレベルの軽さでしょ、これで巨乳っておかしくない?”とツッコミを入れたのは総じて女性読者ばかりだった。大半の男性読者はまったく違和感を感じていなかったらしいというのが恐ろしい。 「……まあ、確かに。数字だけ見れば、その体重は重く見えるのかもしれないけど。あんた、マッチョなわけじゃないし」  はあ、と千晶はため息混じりに言った。 「でも、そもそも大前提として。妃菜の彼氏、そんなこと気にするほど心の狭いタイプなの?あんたがちょっとぽっちゃりしたくらいでデブだとかブスだとか罵ってくるような男ならさっさと別れた方がいいじゃない。妃菜としては、結婚前提に付き合ってるつもりなんでしょ、冬樹(ふゆき)クンと。散々あんたの惚気聞かされてきたあたしとしては、そこまで信用ないような彼氏には思えないんだけどね」 「そりゃ、そうだけどさ」 「なら、そこまで落ち込む必要もないって」  ははは、と笑う彼女は小柄なわりに立派な横幅である。五つ年上の三十三歳、フレンドリーな性格の姉御肌。同じ時に就職したものの、恋愛関係で言うなら一枚も二枚も上手な相手だった。なんといっても十年付き合った彼氏と三年前に結婚した猛者である。結婚をそれだけ長い期間待ったのも凄いし、結婚するまで絶対に間違いが起きないように操を守ったという話も凄い。まあ、それもこれも彼女の結婚相手がかなりの年下だったからなのだが。  私と、状況はよく似ている。そういう意味でも、彼女の言葉には一定の説得力があるのだ。 「大事なんでしょ、冬樹君のこと。向こうもおんなじ。だからちゃんと籍入れるまではそういうのナシにしようって話を受け入れたんでしょお互いに。……あんたが年上なのは確かだけど、あんま気負いすぎない方がいいわよ。いくら冬樹君のハジメテを貰っちゃう日が近いからってさ」 「ちょ、声が大きいってば千晶!」  そう。千晶には包み隠さず話してしまったが、私が一番悩んでいるのはそこなのである。  籍を入れるまでは、絶対に彼と寝ない。そう誓ったのは、私と冬樹のカップルも同じなのだった。というか、そういう誓いを立てなければいけない事情があったのだ、私達には。  私と冬樹は、八歳も年が離れている。  私は元々、彼が通っていた高校の教師。つまり私達は、教師と生徒という所謂禁断の関係だったのだ。
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