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僕たちは、10年後、他に好きな人がいなかったら会おう。こう言って別れた。連絡先をすべて消した。
僕がアメリカの大学に進学することになり、超長距離恋愛になったからだった。
アメリカの大学でも帰国後にも付き合った女性はいたが、長く続かなかった。
僕は勉学や仕事はできる方だと思うが、マメでない男はモテない。高校時代は、一緒に帰れば続いていた。忙しくても恋愛と両立できる奴を尊敬する。
10年後。待ち合わせにした公園に向かっている。
お互い28歳。結婚していてもおかしくない年齢だ。
いずれにせよ、亜弥が来なければ来ないで、諦めがつく。
森林公園の入り口。
あの樹は残っているのか。そんな心配までする。
あの樹だ。僕は小走りした。
いない。少し早く着いたから、もう少し待ってみよう。
心臓がバクバクする。
立派な樹に成長したな、と樹を見上げると、樹の裏に誰かがいた。
目が合った。
「亜弥! 来てくれたのか。ほんと嬉しいよ」
「大輝さん」
「久しぶりだな。なんか照れるよ」
「私も」
「とりあえず、この思い出の公園、ぶらぶらしながら話そっか」
「それがいいわね」
僕たちは高校時代、プラトニックな関係だった。
だから、今もその延長線上にある。
少しずつ、愛を育んでいった。
亜弥は素敵な女性になった。
話題も豊富で、知的。
つぼみから、大輪の花へと。
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