僕の好きな作家はいつも芥川賞を逃す。

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 座ることができた電車の中で、制服のポケットからスマートフォンを取り出す。  メッセージアプリを開き、芥川龍之介の直筆原稿の画像がアイコンになっている似奈のトークルームを押した。  どんなことを言うのがふさわしいのか考えながら、画面をタップして文字を打ち込んでいく。 『今日はありがとう。またこんど、今日みたいに話せたらいいな』  色々考えた挙句、僕は重たくならないように短くまとめることにした。あまり長文を送ってドン引きされても困る。素直に今思っていることを、簡潔に打った。  すると、すぐに似奈から返事がきた。 『私も話したい。よければ夏休み明け、学校の図書館倉庫でどう? 私、鍵借りれるんだ。』  図書館倉庫?  初めて聞く名前だった。図書館じゃなく、図書館倉庫。入学してすぐに校舎案内を受けたが、そんな場所の名前は聞いたことがない。 『図書館倉庫ってどこ?』 『普通あんま行かないよね。体育館の近くにボロい建物あるのわかる?』 『あぁあるね。あそこか』 『始業式の日、放課後にそこに来れる?』 『わかった』  彼女から可愛らしいスタンプが送られてきて会話が終わり、僕はスマホの画面の電源を切った。
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