僕の好きな作家はいつも芥川賞を逃す。

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 始業式が終わったあと、俊たちが僕の席までやってきた。 「お前、今日例の女の子と会うんだろ」  相変わらず俊はにやにやとしている。 「そうだけど」  僕は何を話したらいいのかわからずそわそわしていることを悟られまいと、少し無愛想な態度を取った。 「うまくやれよ」  俊は親指を立てて言った。そして、相川や宇佐山、夕陽も口々に僕に言う。 「最初の印象が大事だからな」 「お前、髪の毛ハネてんぞ」 「しっかりしろよ」  相川が僕の髪を強引に撫で付け、ハネているところを直してくれる。僕は彼らにもみくちゃにされながらも、 「大丈夫だって」 と言いながら教室を出た。 実を言うと緊張しているし、あんまり大丈夫ではないけれど、友達の前ではそう言うしかなかった。
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