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駅につくと、ちょうど到着メロディが鳴り、電車が到着しようとしているところだった。改札にIC定期券を押し付けてすり抜けると、ダッシュでホームへ向かう。ほぼ駆け込み乗車だが、事情に免じて今日は許してほしい。
電車のドアが開いた瞬間に僕はホームに着くことができ、無事、朝香方面行きの電車に乗り込んだ。
俊にすぐにメッセージを飛ばす。
『今電車乗った。あと十分くらいで着く』
この時間は朝香方面からやってくる電車のほうが混んでいる。そっちのほうが都心から外に出る電車なのだ。だから、朝香方面行きの電車は都心に向かっていることになり、まだ混雑度はましだ。
俊からすぐに返事がきた。スマートフォンを開いて確認する。
『了解。そっちのほうが少しだけ早いかも。悪いけど待ってて』
『わかった』
電車を降りて駅前の繁華街方面に出る。この駅は割と飲み屋や遊べる場所が多く、若者からサラリーマンまでたくさんの人で賑わっている。明日も平日なので、休日前より人は少ないが。
街中の人たちの恰好は皆秋服に代わっていて、似奈と出会ってから数か月が過ぎたんだな、とふと考えた。
数分間、その街を眺めていると、俊が定期をかざす音と共に改札から出てきた。
「お待たせ。何があったの?」
俊は僕の顔色を伺った。落ち込むようなことがあったのではないかと心配してくれているのだろう。落ち込むような内容の話も聞いたが、それよりやらなければいけないことで頭がいっぱいだ。
「とりあえず、座れる場所で話したい。マックでいいよな?」
僕は近くにあるファストフード店を指差した。
「いいよ」
店内は近所の高校生や大学生、数組のサラリーマンで少し賑わっていた。満員というほどではない。俊も僕も安く済ませたいので、ホットコーヒーを一杯ずつ注文して、二人用の席を取った。僕はようやくパーカーを脱ぐことができて一息つく。
お互いに無言で一口コーヒーを飲むと、僕と同じように一息ついた俊が口を開いた。
「それで、進展ってなに?」
とりあえず似奈が明日から入院で学校に来られないことを言わなければ、僕がいじめのことを校長にかけ合う決意をした理由がよくわからないことになる。
「今日、例の女の子……似奈と、普通に喋って普通に帰ったんだ。……それで、帰ったら『明日から学校に行けない』ってメッセージ来てて……」
僕はとりあえず最初から事の顛末を話し出した。
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