僕の好きな作家はいつも芥川賞を逃す。

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 七月に墓参りを終えてからしばらくして、僕は高校生活初の夏休みに突入した。思ったより課題が出た。高校生ってこんなものなんだろうか。僕は毎日課題をちまちまとやりつつ、お盆には母方の実家である大阪に行ったり、俊と彼が連れてくる友達と遊んだりして夏休みを過ごしていた。  母方のばあちゃんは「よう来たなぁ」と言って僕を歓迎してくれた。そして家族みんなで先祖のお墓参りにも行った。 僕はちゃんと先祖の墓も参ったぞ、と俊にメッセージを入れると、「おー! 大阪のなんかうまいもん買ってきて!」と俊から連絡が返ってきた。  僕は言われた通り大阪でたこ焼き味のじゃがりこを買い、俊たちと遊ぶときにお土産として渡した。すると、 「めちゃくちゃうめー! ありがとな!」 「ほんとだ、うめー」 と、俊の友達に好評だった。  俊の友達は、こうして俊と遊ぶときにはよく一緒に遊ぶことになる。俊の感覚では友達の友達は友達らしい。僕としても友達が増えるのはちょっとうれしいので、仲間に混ぜてもらっている。高校でそんなに友達が多いわけではないので、こうして交友関係が広がるとうれしい。 「創太はさぁ、本好きだって俊が言ってたけど、そうなの?」  俊の友達のひとり、宇佐山というやつが僕に訊ねてくる。彼は帰宅部で、俊の中学からの友達らしい。彼は夏休みの間だけ金髪になっていた。 「あ、うん。そうなんだ」 「へー。なんかそんな風に見えないけどね。俊の友達だからサッカー好きなのかと思ってた」  みんなでコンビニの前でアイスを食べながら話をしている。徐々にアイスは溶けてきて、手がべたついていた。 「サッカー好きそうに見える? 僕、そんなに運動得意じゃないよ」  そう言って僕は糖分たっぷりの液体が滴るアイスの下を舐めた。 「んー、てゆか、勉強出来そう」  宇佐山もアイスの下側を舐め始める。今日は外でアイスを食べる絶好の気温だが、少し温度が高過ぎたようだ。  宇佐山の言葉に、すぐに俊が反応する。 「こいつ現代文まじやばいから。九十点より下回ってるの見たことないから」  俊が大げさに言った。たしかに僕は現代文が得意だが、理系科目はてんでダメだ。  宇佐山は目を丸くする。 「まじで? それは是非テスト前にお世話になりたいところだなー。たのむわ」 「理系科目以外ならいいけど……」  化学基礎なんて教えろと言われたらたまったもんじゃない。 「じゃあ夏休み明けのテスト勉強、創太に教えてもらうか」  俊が提案した。彼は友達が多いから大勢連れてきて教えることになる未来が見えた。 「いいけど、現代文教えるのって結構難しそうだけどね」 「まぁフィーリングみたいなとこあるしな」  俊も僕を持ち上げてはいるが、それなりに現代文では点数を取っていた印象がある。 「いいじゃん、勉強会は楽しそうだし」  宇佐山がそう言って、勉強会をすることに決まった。
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