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ーーー8月14日、午前2時48分。
忙しないキーボードとサーキュレーターの音が、暑く淀んだ空気に溶けて、酸欠になりそうな夜だった。
閉め切ったカーテンの向こうは、今どうなっているだろう。もう明るいかもしれないし、室内と同様にまだ闇の中かもしれない。節電のために蛍光灯の使用を禁止されているオフィスに、デスクライトとPCのモニターの明かりだけが浮かんでいた。
数時間かかった作業を終えて、プリンターにデータを送る。
「……よし…、半分終わった…」
呟きの成分は、ほとんど吐息だった。
ふと、腕時計を見る。日付が変わって、私は知らないうちに25歳になっていた。
溜息をついてから、机上に手を置き、腰を上げる。
異変を感じたのは、立ち上がって足を踏み出した直後だった。
視界がぼやけて、ひどく歪む。平衡感覚が薄れ、隣の席にぶつかると、積んであった大量のファイルと書類が床に散乱し、ゼリー飲料の抜け殻も幾つか降ってきた。
「ああ…また怒られる…」
痺れる頭を支えるように左手をこめかみに押し当てる。最後に寝たの、いつだっけ。
拾い上げようと、書類に右手を伸ばしてーーー
倒れた。
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