キヲク

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キヲク

 いつだって青年時代を送ったのは戦場だった。  生まれて十五を過ぎた頃には、大きな戦争へと送り出される。  ある時は剣を、ある時は弓を、ある時は槍を、ある時は銃を――生まれ変わってはその度に数えきれない程の人を殺してきた。  戦禍の英雄など謳われもしたが、私は常に怯えていた。  奪ってきた以上は奪われるということを知っていたからだ。  私が恐れているのは報復だけではない。  人を殺す恐怖とも戦っていた。  戦争だから仕方ない――その一言で全てを流せたらどんなに楽だっただろう。  敵兵に獲物を突き刺す感触が、弓を引く指先が、首をはねた返り血が、硝煙の匂いが――私の記憶に焼き付いて。  その度に吐き気と後悔が胸を突く。  何で私は記憶をもったまま、次の生へ向かうのだろう。  平和になった世界で家族に囲まれながら穏やかに一生を終えたとしても、またすぐに次の世界では戦場に飛ばされる。  一体この転生の旅はいつ終わるのだろうか。  終わりなんてないのだろうか――ああ、もう限界だった。 「自殺した魂は救われないのよ」  いつだったか、妻だった女が言っていた。  戦場で生きて帰ってきても、心が耐えきれずに自殺してしまう兵士あがりの男の葬儀でだった気がする。 「自殺が禁忌とされているのは、自殺者の魂は生まれ変わることも出来ずに輪廻の環から外されてしまうからなの」  信仰深い妻は確かにそう言っていた。  悲しそうに目を伏せる表情が脳裏に過る。
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