糸引き電話

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 仕切り直し。  とんだイレギュラーが入ってしまった。  私と樹さんは、また電話とにらめっこに戻る。 「うーん。万が一フミさんの説だとしても、それだけで?」 「だって、うちの番号知ってて何度もかけてくるってことは、そうとしか思えませんよ?」  樹さんは、んー、と口の端を曲げて腕組みした。 「用件は……何なんだ? 俺、どうすればいい?」 「ただ、お話聞いてあげればいいと思います。ホントは、私じゃなくて、樹さんとお話したかったんだと思うんですよ」 「……そうなのかなぁ」  カチッ。  再び、電話のデジタル表示が通電する。デジタル画面に表示されたのは、見覚えのある携帯電話の番号。いつも通りゼロコールで、私がスピーカーモードにして電話を取った。 (……………)  樹さんの目配せに、私は頷く。 しばし躊躇っていた樹さんは、意を決して口を開いた。 「五百旗頭(いおきべ)です。……長谷部君……かな」 (あ………(いつき)……さん…ですか?)   ビンゴ。  私は、席を外そうとして、そおっと腰を上げた。 「うん。そうだよ」 (あの……ごめんなさい)  樹さんの返事に、長谷部君はいきなり謝った。 (オレが何も言えないでいると、いつも、話しかけてくださってたヒトって……) 「ああ、フミさん? 俺の……姉さん」  樹さんは私に目配せして、ここに居たら? と人差し指で下を指すジェスチャーをした。私は、お言葉に甘えてそおっと腰を下ろした。 (でも、なんでオレだって……わかったんですか?) 「姉の………勘? 俺もよくわかんない」  ニヤッと笑った樹さんが、また目配せ。 「神社で、姉に会ったんだって?」 (会った……っていうか……いつも電話で聞いてた声がしたので………驚いちゃって、オレ……) 「ま、細かいことは良いや。……繋がれてよかった」    スピーカーの向こうから、安堵の溜め息が聞こえた。
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