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縁側に本を並べ終わった。
私がその昔つまみ食いした古書もある。
あら、この本は綴じ糸が大分痛んでいるわ。このままじゃ、バラバラになっちゃうかも。修理用の綴じ糸と針を誠一郎さんが仕舞い込んでいたような気がするわ。えと、アレはどこにあったかしら?
立ち上がって書斎に行こうとしたら、あらやだ、またお電話?
「はい。どちら様ですか?」
(こんにちは。御多忙中大変恐縮でございます。お嬢様ですか? こちら、この町内に近日オープンいたしました『アンジュ・ド・ボヌール』という結婚式場でございます。地域の皆様にお電話させていただき、是非その節は御贔屓にとお願いしているところでございます)
「結婚式場……?」
(はい。お嬢様は近々お入り用ではございませんか? 只今オープニング記念といたしまして式場見学にご来場いただきますと、割引で式で提供いたしますお食事の試食をしていただけます。ご成約いただきますと、プランニング料金の割引と、お色直しのドレスレンタル料を一着分無料になります)
わー。
今時、式場の営業電話ってどうなのかしら?
ある意味余計なお世話だわよね。
んー。どうしたらよいかしらね。うまい切り上げ方は……。
「あのー、お嬢様なんて言われて面映ゆいのですが、私、既婚者なんです」
(え? ああ、そうなんですか? 声がお若いので大変失礼いたしました。では、お友達にお入用な方がいらっしゃいましたら、是非お勧めくださいませ。失礼いたしました)
「はい」
電話は切れた。
嵐みたいなお電話だったわ。
お入用……ねぇ。
まぁ、樹さんをはじめ周り中単身者だらけだけれども、そもそも結婚式場が必要かどうかなんてわからないものねぇ。
「えーと……、あ、そうそう綴じ糸!」
私は書斎へ向かった。
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