0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
【貴女の指】
「お迎えに来ました」
いきなり、耳元で囁かれたら、誰だって飛び起きるだろう。
実際、僕はそうだった。
「え? 何の話ですか?」
「ですから、お迎えに参りましたよ。中条敦也さん」
改めて声の主を見てみた。
見知らぬ女の子だ。ふわふわの髪は白く、この世の者とは思えない。ていうか、この世のものではないんだろう。その証拠に、頭に輪がついてるし、羽が生えている。そうして身体全体が、ほんのり透けている。
「……天使?」
「そう見えます? じゃ、そうです」
天使らしき女の子は、変な返事をした。
「お迎えって……僕、死んだの?」
「察しがよくて助かります。昨夜、眠っている間に発作で。ご記憶……ございませんよね」
もともと僕には持病があった。定期的に通院もしていたけれど、発作が起きたら危ないといつも言われていたし、自覚していた。
昨夜は確か、珍しくサークルの飲み会に参加して、禁止されているお酒をほんの少し飲んで、それでご機嫌に帰宅して眠った……はずだったけど。
ああ、それで、寝ている間に発作が起きて、死んでしまったというわけか。
我ながら、なんていうか、情けない。
最初のコメントを投稿しよう!