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【黄昏のハーメルン】
黄昏時。
僕はいつも三角公園にいた。
三角公園には、ブランコと滑り台とジャングルジム、それから僕のお気に入りの砂場があった。
僕はあんまり運動が得意な方じゃないし、砂場でままごとをしている方が好きだった。
それを『女みたいだ』とからかうやつもいたけど、僕のおままごとは、母親にも父親にも名前と設定がついていた。母親が魔女で父親がパイロットとか、そんな感じ。
だから、一風変わったおままごとになった。
それが楽しいと言ってくれる友達もいて、ひとりで仲間にいれてもらえない、ということはなかった。むしろ、僕に誘われて砂場の一員になれる子は、みんな決まって喜んだ。
幼稚園が終わってからバスで家まで帰って、団地近くのこの砂場で遊ぶのは、とても楽しかった。誇らしかった。僕の作る愉快な設定も、みんな気に入ってくれた。
「ほたる君はすごいなぁ」
って、皆褒めてくれた。
でも。
夕暮れ。黄昏時。
さっちゃんもゆうたくんもじゅんくんも、みんなお母さんが迎えに来て、帰ってしまう。
五時を過ぎると、三角公園には僕一人になる。
誰も僕を迎えに来ないからだ。
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