【黄昏のハーメルン】

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と聞かれた僕は、 「すっごく!」 と答えた。 散歩をするのも楽しかったけれど、一番楽しかったのは、ハーメルンの作る物語だった。 そのどれもが、童話をモチーフにした話なのだけど、話と話が混ざっていたり、とんでもない展開をするものもあって、僕を飽きさせなかった。 どの話も、滑稽な主人公が出てきて、物語を引っ搔き回したりして、盛り上げていく。 それが、どれもこれも共通して、最後にはぱったりと死んでしまう。 そこが面白かった。 死ぬって怖いことなのに、ハーメルンにかかるとなんでも面白く、楽しくなってしまう。 一番面白かったのが、シンデレラが実は男で、王子様との舞踏会、ひげをそり忘れたことに気づいて、急いで逃げかえるんだけど、カボチャの馬車のかわりに、骸骨の馬車が出てきて、馬車の中でひげを剃って、そのひげのたくましさにシンデレラがうっとりしているとき、骸骨が海に落ちて死んでしまう話。 「私のひげが!立派なひげが溺れてしまう!!シンデレラはそう言い残して、この世を去ったのでした」 そんな風に結ぶものだから、可笑しくてたまらない。
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