【黄昏のハーメルン】

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僕にお兄ちゃんはいないけど、本物のお兄ちゃんに抱きしめられてるみたいな気がした。 なんだか、お母さんと同じ匂いを感じた。 「ハーメルン……」 「ほたるくん、泣いていいんだよ。泣きたいときには、たくさん泣くといいんだ。好きなだけ、今のうちに泣いておきなさい」 僕はその言葉をきっかけに、わんわん泣き続けた。 今まで誰にも言えなかったことが胸の奥から溢れてきて、とまらなかった。 ハーメルンはそんな僕を、ずっとずっと、抱きしめてくれていた。 しばらくして、僕が泣き止むとハーメルンが言った。 「さぁ、時間がなくなってしまうから、そろそろ行こうか」 そう言った彼の隣には、大きなスーツケースが一つ置かれていた。キラキラ光る水色で、なんだか秘密の宝箱みたいだった。 「ほたるくん、ここに入って」 ハーメルンはそう言って、スーツケースを開けた。 パカッとふたつに割れたスーツケースの中は空っぽで、なんでも飲み込んでしまいそうだ。 「僕が? 入るの?」 「そうだよ」 「どうして?」
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