【黄昏のハーメルン】

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「言っただろう? これから行くのは大人の国だって。子供が混ざっているなんてわかったら、何をされるかわからないよ。だから、ほたるくんには隠れていてもらわなくちゃ」 僕は一瞬ためらってしまった。少しだけ、怖かったんだ。 だけど、僕はスーツケースに入ることにした。 これでおとなの国に行けるんだ! そうして、そのあとはお母さんに会えるんだ! そう思うと、現金なものでわくわくが止まらなくなった。 お母さんに会ったら言うんだ! キャビアもフォアグラも食べたよ! って。 今度ハーメルンと一緒に行こう! 大人しかはいれない秘密のレジャーランド! そうして先日摘んだ紅葉をプレゼントして、髪に飾ってあげるんだ。 お母さんは喜んでくれるかな? くれるよね? 僕は、はやる気持ちを抑えながら、宝箱みたいな、綺麗な水色のスーツケースに入った。 「それじゃ、閉めるよ」 ハーメルンが言った。 「うん」 そこからは暗闇。 本当の暗闇。 僕は酸素の薄いスーツケースの中で、お母さんに抱かれ眠る夢を見た。 どこかで声がする。
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