【黄昏のハーメルン】

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あれはお母さん? 笑顔で手を振って。 『バイバイ』 と。 嬉しそうに、楽しそうに、 『バイバイ』 と。 なんでバイバイなんて言うの? 嫌だよ。これから会えるのに!! そう叫んだら、歌が聞こえた。 それは子守歌のようで、まるでさよならの歌みたいだった。 高くもなく低くもないその声は、ハーメルンのもの。 ハーメルンが歌う。 『バイバイ、愚かなほたる君』 『バイバイ、バイバイ』 僕は暗闇の中、涙の雫をいっぱいに、流したのだった。 *** 俺の名前は染谷祐介という。 幼い頃に母に捨てられ、そのあとは父親に暴力という暴力を振るいつくされ。 今では芸術家とは名ばかりの、金持ちのじじいにパトロンをさせている、一大学生だ。 顔だけは綺麗に生んでくれたこと、母には感謝していた。 俺は母似と言われていたから。 同時に、パトロンたちに言いように性を摂取されるのは、母の美貌のせいだ、と、恨んだりもした。それで食っていけているのに、おかしな話だ。
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