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けれど、歳を重ねても、いいや、歳を重ねるごとに、なぜか母への執着は強くなっていった。
鏡を見て母を想った。
捨てるなら、なぜ産んだ。
いらぬなら、なぜ産んだ。
そんな風にも思った。
穢れ切った自分を浄化するには、母を殺すしかない、とまで思いつめた。
俺はギリギリまで思いつめた結果、母の戸籍を辿ってみることにした。
会えるのではないかと、思った。
夢見た。
母に会いたかった。
記憶にも残っていない母。
美貌の持ち主という母。
一度も自分に会いに来ない母。
……迎えに来ない母。
俺はどこかで、母に迎えに来てほしかったのだ。
今のこの地獄から抜け出すには、それしか方法が無いように思えた。
けれど待てど暮らせど母は迎えに来ない。
ならば此方から会いに行けば。
今思えば頭がおかしかった。
自分を無情に捨てて、一度も会いに来ない母に、どんな期待ができるというんだ。
それでも会いたかった。
住所は掴んだ。あとは会いに行くだけ。
母は密集したように立つ都営団地に住んでいた。
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